天売島・焼尻島へキャンピングカーで渡る旅|フェリー輪行と離島車中泊の実践ガイド【2026年版】
北海道の日本海に浮かぶ天売島と焼尻島は、本州から来る旅行者でもなかなか足を踏み入れない離島です。天売島には100万羽とも言われる海鳥が繁殖し、焼尻島にはサフォーク種の羊の群れとオンコ(イチイ)の原生林が広がる。どちらも「行けばよかった」と思う人が多い、北海道屈指の秘境エリアです。
ただし、キャンピングカーで北海道を旅している人には悩みどころがあります。車ごと島に渡れるのか? 渡れないなら本土に置いて、どう動けばいいのか? フェリーの航送条件、宿泊場所、島内の移動手段、羽幌での車中泊事情まで、キャンピングカー旅ならではの視点で整理しました。
なお、天売島・焼尻島は羽幌から日帰り日帰りで往復するには時間が足りません。少なくとも1泊、できれば両島で1泊ずつ確保して、島のペースにゆっくり合わせる旅程が向いています。
天売島・焼尻島の魅力と離島旅の特徴
天売島(てうりとう)は羽幌町に属する周囲約23kmの島です。島の西側の断崖には毎年春から夏にかけて100万羽超の海鳥が繁殖地を構えます。ウトウは世界最大の繁殖地がこの島で、5月から7月にかけての夕刻の帰巣は数十万羽が一斉に頭上を飛び交う、北海道でもほかに代えのない光景です。オロロン鳥(ウミガラス)もかつては多数繁殖していましたが現在は激減しており、貴重な観察地として保護活動が続いています。冬は強風と荒波が厳しく、一般観光客が渡れるのは春から秋の期間が中心です。
焼尻島(やぎしりとう)は天売島の南約10kmに位置する、さらに小さな島です。島全体にオンコ(イチイ)の木が風を受けて特徴的な形に育った原生林が広がり、その景観は「焼尻のオンコ林」として北海道の天然記念物に指定されています。また、島で放牧されているサフォーク種の羊は温和な顔で観光客を迎えてくれます。焼尻島は天売島と比べて観光客がさらに少なく、静かな離島の時間を求める旅人に好まれています。カップルや二人旅でキャンピングカーを利用する場合、本土から少し足を延ばして離島に渡ると特別な時間になります。
どちらの島も、コンビニやスーパーはありません。宿泊施設は民宿が中心で、島に渡る前に食料・飲料・充電器や必要なものを揃えておく必要があります。本土・羽幌での準備が旅の質を左右します。
天売島と焼尻島の大きな違いは「賑わい方」です。天売島は海鳥目当ての観光客が一定数訪れ、民宿も複数あります。焼尻島は人口100人台の小さな集落で、宿も数えるほど。焼尻島に泊まった旅人が「島を独り占めした気分だった」と語るのはよく聞く話です。両島をセットで旅するなら、焼尻1泊・天売1泊のプランが最もポピュラーです。
羽幌からのフェリー航路と車両航送の可否・料金目安
天売島・焼尻島へのアクセスは、羽幌港発のハートランドフェリーを使います。羽幌港を出港し、焼尻島に寄港してから天売島へ、という順番です。所要時間は羽幌〜焼尻が約1時間、焼尻〜天売がさらに約20分。天売〜羽幌の直行便もあります。
運航本数は季節によって大きく変わります。夏季(概ね6〜8月)は1日3〜4往復設定されることが多く、冬季は1日1〜2便に絞られます。時刻表・運航情報はハートランドフェリーの公式サイトで必ず事前に確認してください。海が時化ると欠航になることがあり、離島旅では天気予報と欠航情報のチェックが必須です。
乗船時間は比較的短いですが、日本海の波で揺れることがあります。船酔いしやすい人は酔い止め薬を乗船前に服用しておくと安心です。夏季の早朝便は日の出を海上で見られることもあり、旅情を感じるひとときになります。
車両の航送について
キャンピングカーで最初に気になるのが「車ごと島に渡れるか」です。ハートランドフェリーの天売・焼尻航路は旅客と自転車・バイク・乗用車の航送に対応していますが、大型の高さ制限や車両重量の条件があります。キャブコンや大型バンコンは制限に引っかかる場合もあるため、必ずフェリー会社に問い合わせて確認してください。
また、車両の予約は繁忙期に早期満席になりやすく、特に夏季は2〜3ヵ月前からの予約が求められることがあります。乗船予約と同時に車両航送の枠を確保できるか確認することが重要です。
旅客運賃の目安(片道・大人1名)は羽幌〜天売間で2,000〜2,500円程度です。車両航送料金は車両サイズによって変わり、乗用車クラスで5,000〜10,000円前後の目安となりますが、時期と車両寸法によって変動します。最新料金はハートランドフェリー公式サイトでご確認ください。
キャンピングカーを本土拠点に置く旅程 vs 車ごと渡る旅程
実際の旅では、キャンピングカーを羽幌本土に置いて旅客として渡る方法と、車ごとフェリーで渡る方法の2択になります。それぞれの特徴を整理します。
プランA:キャンピングカーを羽幌に置いて旅客のみ渡る
最もシンプルで確実な方法です。羽幌港近くの駐車場にキャンピングカーを止め、身軽に旅客として島に渡ります。島内での移動は徒歩・自転車・島内観光タクシーを使い、1〜2泊して戻ってくる旅程です。
この方法には複数のメリットがあります。フェリー予約が旅客のみでよく手続きが楽、乗船当日の車両寸法や重量を気にしなくて済む、島内の狭い道でも徒歩や自転車で自由に動けるという点です。島内に車を持ち込んでも、道は本土の一般道と全く異なり、天売島なら一周12kmの小さな島です。車よりも自転車の方が海鳥コロニーへのアプローチも含めて探索しやすいという声もあります。
デメリットは、島での荷物を最小限に絞る必要があること、キャンピングカー内の食料や装備を活用できないこと、宿泊は民宿や宿に頼ることになる点です。ただし天売島・焼尻島の民宿は新鮮なウニ・甘エビ・ホタテなど島の幸を出す店が多く、島での食事そのものが旅の目玉になります。「民宿の夕食が忘れられない」と語る旅人は少なくありません。
羽幌の長期駐車場の候補として、フェリーターミナル近くの有料駐車場があります。2泊3日程度の旅なら駐車料金と島での宿泊費を合わせても、車両航送コストより安くなることが多いです。費用面でもプランAは合理的な選択です。
プランB:キャンピングカーごとフェリーで渡る
車を島に持ち込めれば、荷物の制限がなくなり、島内もキャンピングカーで動けます。天売島には「Aにしのはまキャンプ場」、焼尻島には「やぎしりキャンプ場」があり、キャンプ場での車中泊も一つの選択肢です。
ただし、このプランには前提確認が必要です。まず、レンタルキャンピングカーは契約上フェリー航送が禁止されているケースがほとんどです。レンタル会社の利用規約には「島嶼部への乗り入れ不可」「フェリー航送不可」という条件が含まれる場合が多く、違反した場合は保険が適用されないリスクがあります。出発前に必ずレンタル会社に確認してください。
また、大型キャンピングカーは前述の通り車両制限に引っかかる可能性があります。島内の道路も狭く、全長・全幅の大きな車両は運転に注意が必要です。これらの条件をすべてクリアできる場合のみ、プランBが現実的な選択肢になります。
自家所有の小型キャンピングカー・軽キャンパーなら車両制限をクリアできる可能性があります。ただし繁忙期の車両枠は早期に埋まるため、3〜4ヵ月前からの計画と予約が求められます。
| プランA(本土に置く) | プランB(車ごと渡る) | |
|---|---|---|
| フェリー予約の手軽さ | 旅客のみで簡単 | 車両枠の確保が必要 |
| レンタカーの場合 | 問題なし | 多くの場合規約違反 |
| 島内での荷物 | 少量に絞る必要あり | 車内装備をそのまま使える |
| 島内の移動 | 徒歩・自転車・タクシー | 車で自由に動ける |
| 宿泊 | 民宿・宿 | キャンプ場車中泊も可能 |
| 費用 | 旅客運賃のみ | 車両航送料が加算 |
島内の移動手段・見どころ(海鳥コロニー・めん羊牧場)
天売島の見どころ
天売島で最も有名なのは海鳥の繁殖地です。島の西側に広がる断崖には、ウトウ・ウミガラス(オロロン鳥)・ケイマフリなど複数の海鳥が産卵・子育てします。特にウトウは夕刻になると海から一斉に巣穴へ帰還し、頭上を大群が飛び交う光景は初めて見る人の多くが言葉を失うほどです。観察のベストシーズンは5月下旬から7月。夕暮れ時に断崖へ向かう「ウトウ帰巣ツアー」に参加すると、ガイドの案内で安全に観察できます。
島内観光は観光船も出ており、海上から断崖と海鳥を見るクルーズツアーが人気です。島内は周回道路が整備されており、レンタサイクルを借りて一周する旅人も多いです。東側には「天売港」周辺に商店・民宿が集まり、西側の「観音崎」では視界いっぱいに広がる日本海のパノラマが楽しめます。夕日スポットとしても知られています。
焼尻島の見どころ
焼尻島の象徴は二つあります。ひとつはオンコの原生林。オンコ(イチイ)が日本海の強風に晒され続けた結果、幹が水平に伸び、まるで造形物のように見える独特の樹形に育ちます。この林が島の各地に広がり、歩いていると現実感の薄い景色の中に入り込んだ気分になります。
もうひとつはサフォーク種の羊です。白い体に黒い顔が特徴のサフォークが島内の牧場で放牧されており、近くで写真を撮ることもできます。焼尻産のサフォーク羊肉は島の名産で、宿での食事に出てくることもあります。
島は一周約10kmと天売よりも小さく、徒歩でも半日あれば主要スポットを回れます。レンタサイクルがあれば効率よく動けます。島内に信号はなく、車もほとんど走っていないため、のんびり歩いて写真を撮りながら過ごせる環境です。宿での夕食に焼尻産サフォークのラムが出れば、それだけで十分な旅の記念になります。
焼尻島のキャンプ場「やぎしりキャンプ場」は無料で利用でき、テントの持参が必要です。キャンプ場からは海と牧場の眺めが広がります。キャンピングカーを持ち込める条件が揃っている場合、ここでの車中泊は離島ならではの静けさの中で過ごせる特別な体験になるでしょう。なお、キャンピングカーのトイレ・汚水処理の扱い方は島内のような施設が限られた環境では特に重要な確認事項です。
本土側(羽幌)の車中泊・RVパーク・入浴
キャンピングカーを羽幌に置いて島へ渡る場合、出発前夜と帰還後の羽幌での宿泊場所が必要になります。
羽幌での車中泊スポット
羽幌町内の車中泊候補として、道の駅「ほっとはぼろ」があります。羽幌の市街地に位置し、施設内には温泉「羽幌温泉ホテル」も隣接しています。港から車で数分の距離なので、翌朝のフェリーに合わせた宿泊場所として使いやすい立地です。ただし駐車場での車中泊のマナーとして、アイドリングを控える・ゴミを適切に処分するなどの基本を守ってください。
羽幌港に近い駐車場を確認しておくと、フェリー乗り場まで徒歩でアクセスでき、長期駐車できるかどうかは現地での確認が必要です。夏季はフェリー利用者が多くなるため、繁忙期は早めに駐車場所を確保する意識が求められます。
入浴・温泉について
羽幌には「羽幌温泉ホテル」があり、道の駅ほっとはぼろの敷地内でアクセスしやすい施設です。日帰り入浴にも対応しており、島から戻った後の疲れを癒す場所として使えます。料金や営業時間は変わることがあるため、事前に電話確認を推奨します。
羽幌から少し北の苫前町には「苫前温泉ほたる」、南の留萌には複数の入浴施設があります。羽幌単独では施設が限られるため、前後の旅程で留萌方面にも立ち寄ると入浴の選択肢が広がります。道の駅ほっとはぼろに隣接の温泉を島帰りの夜に使い、そのまま翌朝まで駐車場で過ごすという流れが、キャンピングカー旅のパターンとして組みやすいです。
羽幌周辺でのキャンピングカー旅の補給
羽幌町内にはスーパーやコンビニがあり、島に渡る前の食料補給が可能です。ガソリンスタンドも市街地にあるため、出発前に燃料補給を済ませておくと安心です。島内にガソリンスタンドはないか、あっても利用できる時間が限られる場合があります。
羽幌は留萌から国道232号を北上して約60km、稚内から南下して約130kmの場所に位置します。道北・日本海ルートで北上・南下する旅程に天売焼尻を組み込む人が多く、増毛・留萌をキャンピングカーで走る日本海オロロンラインから続けて旅するパターンがよく見られます。羽幌の手前には「道の駅おびら鰊番屋」もあり、ニシン漁の歴史を感じながら休憩できます。
よくある質問(FAQ)
キャンピングカーでフェリーに乗って天売島・焼尻島に渡れますか?
車両のサイズによっては航送可能ですが、大型のキャンピングカーは高さ・重量制限に引っかかる場合があります。またレンタルキャンピングカーは利用規約でフェリー航送を禁止しているケースがほとんどです。自家所有のキャンピングカーで渡る場合も、事前にハートランドフェリーへ車両寸法を伝えて可否を確認してください。
海鳥を見るなら何月に行くのがよいですか?
天売島のウトウやオロロン鳥(ウミガラス)の観察ベストシーズンは5月下旬〜7月です。特に6月中旬〜7月上旬は繁殖のピークで、夕方の帰巣シーンが壮観です。8月以降は海鳥の数が減り始めます。海鳥観察を目的にするなら、この時期に合わせて旅程を組むと収穫が大きくなります。
羽幌で何日分の食料を準備すればよいですか?
島内にはコンビニやスーパーがないため、島滞在中の食料はすべて持参するか、民宿の食事に頼ることになります。民宿泊の場合は食事付きプランが多いため心配不要です。自炊する場合は羽幌のスーパーで島滞在日数分を購入してから乗船してください。飲料水も多めに確保しておくと安心です。
フェリーが欠航する確率は高いですか?
日本海は波が立ちやすく、特に春先や秋は欠航が起きることがあります。夏季でも天候次第で欠航や遅延が発生します。旅程に余裕を持たせ、帰りの便が欠航した場合も想定しておくとよいでしょう。欠航情報はハートランドフェリーの公式サイトやSNSで確認できます。
焼尻島と天売島、どちらを先に回るのがよいですか?
フェリーの航路は羽幌〜焼尻〜天売の順に寄港するため、羽幌発の場合は焼尻島に先に到着します。天売島を先に見たい場合は天売島直行便を選ぶ時刻もあります。旅程によって変わりますが、両島を1泊ずつ回る場合は焼尻で1泊・天売で1泊という流れが自然です。帰りは天売〜羽幌の直行便を使うと時間の節約になります。
島内でキャンピングカーなしの場合、何で移動しますか?
天売島・焼尻島ともにレンタサイクルがあり、小さな島なので自転車で十分回れます。一部宿では宿泊客向けにレンタサイクルを貸し出しているところもあります。また島内観光タクシーや、海上からの観光船ツアーも選択肢のひとつです。体力に自信がある方は徒歩でも天売島・焼尻島それぞれ半日で主要スポットを巡れます。